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kkj 特集~緑と共に暮らす

地球温暖化と緑

緑だけが持つ素晴らしい能力。それは、すべての生き物に必要な酸素を生み出す力です。いま、特に先進国が真剣に取り組んでいる「温室効果ガスの削減」にも、緑の持つ力を取り入れることが必要不可欠になります。
まずは、なぜ地球温暖化がこれほどまでに問題視されるようになったのか、その起因について見ていくことにしましょう。

この記事は2007年7月に作成されたものです。文中で紹介しているデータは当時のものですので、ご了承ください。

地球温暖化のしくみ

ドイツ・ハイリゲンダムサミットは「2050年までに温室効果ガス排出量を50%削減することを真剣に検討する」という目標が立てられ幕を閉じました。50%削減の根拠は、IPCC(国連の気候変動に関する政府間パネル)による「現在の二酸化炭素排出量を半減できれば、森林や海洋の吸収量に近づき、大気中の二酸化炭素濃度を安定化させる可能性が出てくる。」という報告をうけてのこと。
温室効果ガスがもともと地球上に存在していた、無くてはならないものですが、なぜ半分も減らす必要が出てきたのでしょうか?

IPCC(国連の気候変動に関する政府間パネル)が2007年4月に発表した第4次評価報告書では、「人為起源の温室効果ガスの増加が地球温暖化を引き起こしている可能性が極めて高い。」といった見解が打ち出されました。根拠としては、二酸化炭素排出量と世界平均気温の推移が比例しているところでしょうか。二酸化炭素濃度は工業化以前(1750年)の288ppmから379ppm(2005年)と、65万年の歴史の中で最も高濃度の値となっています。

※同報告書によれば、人為起源の物質による温室効果ガスのうち、6割程度がCO2、2割程度がメタン(CH4)、残りが一炭化二窒素(N2O)や代替フロントなっている。メタンはの温室効果の強さはCO2に比べて25倍、N2Oは298倍、これらと同様に京都議定書の削減対象になっている六フッ化硫黄(SF6)は、なんと2万8000倍もある。ただし、排出量は圧倒的にCO2の方が多いため、温暖化対策上はCO2の削減が注意されている。

自然界が吸収できる二酸化炭素の量には限りがあります。気候を安定させ、悪影響の拡大を防ぐには、人類全体が排出する温室効果ガスの量と吸収量のバランスをとる必要があります。そのために1997年に京都で開催された気候変動枠組条約第3回規約国会議(COP3)で「京都議定書」が採決され、温室効果ガス排出量の削減目標が法的拘束力のある国際的な約束として取りまとめられることになりました。

温室効果ガス削減のために不可欠な「森林吸収源対策」

出典:家庭部門における二酸化炭素(CO2)排出の動向(全国地球温暖化防止活動推進センター

京都議定書では、2008年から2012年までの5年間の温室効果ガスの平均値を、基準年(1990年)の水準と比較して、先進国全体で少なくとも5%、日本では6%削減することが取り決められました。 ー6%を削減させるために必要不可欠なこと。それは「温室効果ガスの削減」と「二酸化炭素吸収量の増加」です。

1.温室効果ガスの削減:エネルギーや資源を消費する際に排出される二酸化炭素の量を減らす
2.二酸化炭素吸収量の増加:吸収対象となる管理育成された森林を増やす
出している温室効果ガスを減らして、吸収して酸素にかえす緑の量を増やす。これが各国が共通で掲げている地球温暖化解決の方法です。こう書くととてもシンプルですが、日本国内ではそれぞれに問題を抱えています。

参考サイト:全国地球温暖化防止活動推進センターHP

まず削減に関する日本の問題として、排出量がなかなか減らせないことがあげられます。
左のグラフは、日本の部門別二酸化炭素排出量の割合を示したものです。
その中で特に、住宅・建築に関わる「民生部門」の値に注目してみると、排出量は全体の31.9%(4.12億トン)を占めていることがわかります。この値は90年以降増加を続け、90年を基準とした増加率はすでに30%以上にもなっていることから、住宅を含む建物の省エネルギー化が緊急の課題となっています。政府としては、建物の省エネルギーによって約9万トンを削減したいと考えています。

もうひとつの課題「二酸化炭素吸収量の増加」については、正しく管理された森林の増加が急務になっています。
下の図は、主な先進国の温室効果ガスに対する森林吸収量の適用条件と森林面積を比較したものです。必ずしも森林面積と吸収量適用上限値が比例していないことに気づかれたでしょうか?

■主な国の温室効果ガスに対する森林吸収量の適用上限値と森林面積の比較

平成13(2001)年に開催されたCOP7※では、京都議定書の運用ルールを定めた「マラケシュ合意」が採択されました。これにより「森林による二酸化炭素吸収量の算入ルール」が定められ、日本としては1300万炭素トン(4767万二酸化炭素トン)が認められました。
吸収源となる森林には3つのタイプに分類されます。
1つは「新規植林」過去50年間森林がなかった土地に植林した場合。
2つ目は「再植林」1990年以前は森林だった場所を農地として利用していたところへ再び植林するという方法です。
3つ目が「森林経営」持続可能な方法で、森林の多用な機能を十分に発揮するために一連の作業を行っている森林が対象となります。
日本ではすでに多くの森林が造成されていて、新しく造成する森林が限られることから、3つ目の「森林経営」の吸収量で1300万炭素トンを確保することが必要となります。
しかし現状のままの体制では、2010年になっても達成量には110万炭素トンが不足することが分かっており、早急た対策・実行が求められているのです。

失われたバランスを取り戻すために

地球が生命の住める環境になったのは、大気中に温室効果ガスが含まれているから。例えば温室効果ガスがなかったら、現在の地球の平均温度15度も-18度くらいになり、地球はの極寒の星になるのでは?と予測されています。
温暖化ガスは地球に生命が生きていくために、なくてはならないものです。問題はそのバランスが人の営みによって崩れたことにあります。
バランスを取り戻す人の営みを考える時に、緑のもつ機能を活かす住まいや暮らしづくりは重要なキーワードになります。
次は緑が持つ様々な機能と、それによって私たちの生活がどう支えられているのか、一緒に見ていくことにしましょう。

緑が支える暮らし

参考資料:不都合な真実/アル・ゴア著/ランダムハウス講談社、気候の安定化に向けて直ちに行動を!-科学者から国民への緊急メッセージ-/平成19年2月2日発表用資料、日経エコロジー2007年7月号「ここまでわかった!地球温暖化の現実」/日経BP社

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