住む・暮らす

くらしかた・すまいかた

Vol. 010:内田邸03

時間をかけて自然を見つめることの大切さ

○これから環境共生的な住宅を建てたい、暮らしたいと思っているみなさんへ、アドバイスをお願いします。

村上さん: 私たちはこの家を設計し始めるまでに、1年間かけて敷地の四季がどんな風に変化するか見ました。

○1年間の四季を見て、一番印象的な違いはどんなところでしたか。

内田さん:景色の見えようとかですね。家の正面に赤松の林があって、東の方を見ると、遠景に唐松の林があって。

村上さん: 冬になると葉っぱが落ちて、森林公園を歩いてる人が見えるくらい、景色が変わるんです。 見る以前からなんとなく感じていたことも、形になったのはその1年間があったからだと思います。だからみなさんも、敷地の環境をじっくり時間をかけて見て、どんな風にその季節を楽しんで暮らしていくか自分たちの中でイメージができてから設計を始めるということを大事にしてほしいと思います。

例えば我が家の場合、夏も楽しみ、冬も楽しみってことをしたかったんですね。夏の食卓を外に作って、夏は外で食べる。岩手の夏は短いけど、暑すぎず、さわやかな季節なので。冬は冬でストーブで焼き芋を作る。ストーブを囲みながら暖かく過ごす。この二つだけで始まりました。自分の一番やりたいこと、「これをやるんだ!」ということがハッキリしたら、あとはそれについて行くんじゃないでしょうか。

内田さん: 住まいづくりというのはなかなか、1発で100点満点の回答は出ませんし、逆に少しここは後から決めようね、という「ゆるやかさ」があるといいと思います。我が家の場合も、十分に考えて作ったつもりなんですが、やっぱり薪の置き場が足りないから屋根を付けたいなとか、車の車庫に屋根付けたいなとか、いろいろ出てきています。

村上さん: そうです。まだ出来上がってない。

内田さん: 庭なんかもっとそうです。大きく育った木を高いお金出してぽんぽん植えれば、すぐに完成した庭にはなるんでしょうけども、育っていく時間とか、思いのほか育ったからどうしようも含めて、変化とどう付き合っていくか。時間をかけかけ暮らしていく中で見えていくこともあるし、そういう変化を楽しみながら気長に家と付き合っていけるとよいのではないでしょうか。

今日は貴重なお話、ありがとうございました。
自然環境によりそう住まい・内田邸
台所横に設けられた倉庫は、食料庫の他に、長靴や合羽など、外作業のための道具置き場も兼ねており、南北の庭に通り抜けられるようになっている。
秋から冬にかけて、柿の木やフィードテーブルを目指してたくさんの野鳥がやってくる。
雪が降れば雪かきも必須。その他、薪割りや草刈りなど家族みんなで仕事を分担している。
2階の子供部屋に設けられた天窓。日中の室内も明るく照らす。
南側に設けられた洗濯室。梅雨時や冬季の物干し場にも利用。
室内から庭を望む。四季ごとに変わる景色を楽しめるのも内田邸の魅力のひとつ。

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