住む・暮らす

くらしかた・すまいかた

Vol. 011:羽根木エコハウス03

上:屋根材一体型の太陽電池パネルを使った北屋根
○個人の住宅の性能として「CO2の削減量」を意識されている方は珍しいと思うのですが、家を建てるにあたって具体的な目標値を持って設計・建設をされたのでしょうか。

北側に太陽光パネルを設置するのを決めたあたりから、自分の中でも環境対策の取り組みに対する意識が変わってきました。自分の家における環境対策は光熱費を削減して投資の元金を取り戻すために行うのではなく、CO2排出量を減らすためにするのだと考えるようになってきたのです。

目標値についても最初から持っていたというより、羽根木の家に住み始め、計測を1年くらい続けたあたりで、絶対評価がどうなっているのかが気になり始めました。つまり以前住んでいた家と羽根木ハウスのCO2排出の「削減率」での評価ではなく、排出量そのものの評価ができないかと。これがやってみようとするとけっこう難しい。

○環境対策の初期投資は、どのくらいかかったのでしょうか。

図2にあるように、通常の住宅工事にかかった金額と環境対策にかかったものを分けて考えると、羽根木エコハウスの場合、951万円の初期投資をしています。その内太陽発電や太陽熱利用にかかる部分には138万円の助成金を充てることができました。参考までにわが家の新築工事費は平米単価にして29万円。当時の住宅金融公庫が出した混合造の場合の建築単価は30万円程度なので、三階建ての混交造であることを考えればまあ普通の部類に入ると思います。この普通の建築工事費に対して、環境対策にかけた費用は14%くらいでした。

もちろん全てのエコハウスにこれだけの設備投資をする必要はありません。わが家の場合は採算を度外視して実験の意味で入れた環境対策・設備もあるので、通常に比べれば過度であると言えます。具体的な金額(図2)を示しましたが、9年くらい前にフルコースの設備投資にはこのくらいかかりました、というあくまで一つの例として捉えてほしいです。

○そのフルコースの環境対策の中で、特に効果の高い対策はなんだったのでしょうか。

一番費用対効果が良かったものは「断熱」です。窓などの外部建具工事と壁面の断熱工事で、純粋に環境対策にかかった費用は約120万円。環境対策費のうち13%にしかなりませんが、OMソーラー協会が提供しているシュミレーションソフトを使って、標準的な4人家族が普通程度の断熱仕様の羽根木ハウスに住んだ値と、東北並みのQ値で建てた実際の羽根木ハウスに同じく4人が住んだ値を比較したところ、削減率は約38%。二酸化炭素換算した削減量は1300kgで、シミレーション上の削減量のうち約32%を稼いでいます。これからエコハウスを建ててみたいという人には、まずは断熱性能をあげることを一番オススメします。

それから、家族に一番好評だったのは「食器洗浄機」です。二世帯分、多いときで7人分の家族の食器を洗って乾かしてくれるわけですから、省エネ云々の前にとても役にたってくれる家電です。その上、通常の手洗いよりも水の使用量だけでも40%を削減、わが家は太陽熱であたためたお湯を食器洗浄機用にも使っていますが、通常の上水を使った場合でも給湯にかかるエネルギー量、CO2排出量は38%強の削減になると各メーカーのカタログに書いてあります。有用性が高い家電ですね。

家の住み方にも巧拙がある

○環境対策をしてある家であれば、食器洗浄機を使うように、住む人は意識せずに省エネ・CO2削減対策ができるのでしょうか。

少なくともエコハウスの場合、建てただけでは本来持っている環境性能を活かすことはできません。例えば同じ環境条件で、性能が同じエコハウスがあったとして、使い方の巧拙で効率に差が出てきます。つまり年間25万円のわが家の光熱費削減も、何も気にせず暮らして出た値ではありません。意識して暮らしているから、想定よりも大きな効果が上がっていると言えます。

○例えばどんな暮らし方が省エネ効果を高めるのでしょうか。

第1に節水ですね、私の母のように身体的に衰えている高齢者に、こまめに節水するように言っても蛇口を開けたり閉めたりの対応は難しいのが現実です。そこで水道屋さんに相談し、洗面所の下の吸水管の元栓を細くし、洗面台の栓を全開にしても節水できるようにしました。
また入浴時のお湯の使用量も減らしたかったので、節水型のシャワーヘッドに替えました。トイレも大の方のフラッシュをチェーンを外すことで止めています。その他、雨水で済む部分には雨水を使おうということで、2階南面のベランダにあるプランターに自動灌水できるようにしました。こんな感じで節水は入居1年目の390リットルから250リットル程度に減りました。

実はスイッチをこまめに切るなどの「心がけ省エネ」で減らせるエネルギー、二酸化炭素はせいぜい現状の1割とかいう実験結果があります。エコハウスは、その心がけ省エネ以上の効果をあげる方法はないかと悩み、家そのものの性能をあげることが決め手になるのではないかということで、実行に移した成果です。

しかし実際にエコハウスを建ててみて、やっぱりそれだけじゃだめだと。初心に返るというか、「家」と「暮らす」という物と行為は、結局切っても切れない関係なんでしょう。

図2 環境対策ごとの費用内訳と活用した補助金
(図をクリックすると大きく表示されます)

小林さんコメント:上の表の数値はわが家の取り組みがいわばフルコース的なものであり、かかる初期投資金額の上限的なものであることと、99年頃の価格であることを前提として、あくまでこれからの参考の一例として示したものです。特に環境対策に関わる設備機器は、量産が進み、だいぶ価格も安くなったんではないでしょうか。また太陽光発電や高断熱住宅、雨水利用や屋上・壁面緑化に対する助成制度が各自治体ごとで行っている例も増えてきたと思いますので、自分でエコハウスを建てたい人はまず今の情報を収集して、比較検討してみることをオススメします。

※1階温水床暖房工事と7部屋分の電気ヒートポンプ付き空調機を想定
※2貯湯槽付き大型給湯器を想定
※3現在の省エネ基準に対応する断熱壁工事を行った場合
※4現在は個々の家庭に対しての実施はなくなっている
図3 羽根木エコハウス環境投資資金 951万円の回収グラフ
(図をクリックすると大きく表示されます)
・環境投資資金総額=951万円
・今後エネルギー価格が上昇すると、投資の回収はもっと早くなる。
・実験的な設備や緑化、自然素材への投資額も計上してるので、回収年数が延びている。
(「エコハウス私論」(株)木楽舎発行より)

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