kkj 特集~鳥と共に暮らす
街にすむ鳥たち
都市、特に東京のような巨大都市は、人間が自分達に都合の良いように自然を改変してきた場所です。緑や水辺が激少し、餌場も減り、野生生物のすみにくい環境の筆頭にあげられ、当然、野生生物は姿を消すものと考えられていました。しかし、その都市環境に順応し、生き残る術を学んだ鳥たちがいます。そんな「都市鳥」たちの顔ぶれを紹介しましょう。
都市鳥たちの顔ぶれ
都市鳥はシナントロープ※化した動物です。特性としては「環境や食性への順応が高いこと」、「知恵が発達していること」「人間を恐れず忌避しない」といった項目があげられます。「都市鳥」だけではなく、里山の農家の天井に住むムササビ、軒下に巣をつくるキセキレイ、ダムの排水溝に巣を構えるブッポウソウなどの生きものたちも、それぞれの環境の変化に順応し、人間のもたらすものを利用して暮らしています。
都市鳥は野生の独立性を保ちながら、人間文明の利用できる部分をちゃっかり利用して生きています。例えば、カワセミはベランダの水槽の魚を捕食していますし、猛禽類のチョウゲンボクは高層ビルや橋桁に巣を営むようになりました。ツバメは自動扉の開閉センサーの前でホバリングして扉が開閉できることを学んだおかげで、人のいる建物の内側でカラスやスズメの襲撃を避け、安心・安全な環境で子育てをしています。
スズメ、ドバト、ツバメ、トビは「都市鳥」として古くから馴染みのあった鳥ですが、近頃はもっと自然度の高い環境にすむ鳥(ハシブトガラス、ハクセキレイ、キジバト、ヒヨドリ、メジロ、カワセミ、チョウゲンボク、コゲラなど)もぞくぞくと都市に進出してきています。
(写真提供:自然の写真素材フォトココ http://www.pkoko.jp)
※Synanthropeとは「人類(anthropos)」と「syn(~と共に)」という意味を合わせた造語です。『人類文化許容活用型動物』とでも訳すのでしょうか。そして「シナントロピズム」とは、いままで野性の生活を堅持して人類文明を容認せず、利用もしなかった野生生物がシナントロープ化することを言う。(参照:解雑学/鳥のおもしろ行動学/柴田敏隆著/ナツメ社)
益鳥から害鳥と呼ばれるようになった鳥たち
鳥が都市へと棲家を変えたことで、人間の生活にも影響がもたらされています。いわゆる「鳥害問題」です。代表的な鳥として「ヒヨドリ」「ムクドリ」があげられますが、彼らは農村部において、益鳥として扱われてきました。都市に棲家を変えたことから、人間が彼らに抱く評価がだいぶ変わってしまったのはなぜなのでしょうか?
移動拠点を増やす - 住宅地の緑がもたらすもの
移動拠点を増やす - 住宅地の緑がもたらすもの
都市であれ、山林であれ、そこに鳥が生きるための環境がなければ、段々と数を減らし最後には姿を消してしまいます。鳥が生きて行くいために必要な量の餌は、例えばシジュウカラ1匹でも年間に食べる蛾の幼虫は十万匹以上と言われています。十万匹の蛾の幼虫を育む環境が都市の中になければ、その上位の捕食者はさらに生きるのが難しくなってきます。
虫を育むために必要なもの。それは植物です。生態系ピラミッドの中では、緑のことを「生産者」として考えます。すべての生命の基盤となる「緑」がなければ、直接葉や蜜を必要としない生き物たちでも、自分の食料となる生き物が育たないといった「害」を被ってしまいます。
都市の緑の中で、生態系を育む力を持っているのは大きな敷地を持った公園とは限りません。小さくても、密に分散している。そう、あなたの家の庭は生きものを育むための重要な「フィールド」なのです。さらに、住宅地の緑は、鳥や生き物にとっての貴重な「中継点」に成りえます。
翼を持つ鳥たちは、生き物として抜群の移動性を持ちますが、そんな彼らにしても、餌場からねぐらまでの移動に中継地点は必要なのです。
鳥を呼ぶ植物