くらしかた・すまいかた
Vol. 05:宮崎台桜坂01
桜坂に住み始めた理由
○宮崎台に住み始めたきっかけを教えて下さい。
ご主人: その時の担当者から、地主さんが戦後から育てた森の中に定置借地権で戸建て住宅を建て売りするという話を聞き、実際に物件を見に行きました。 その後、幸運にも今の家を購入することが決まりましたので、7年ほど前から桜坂の住人です。
○以前はどんな家にお住いでしたか?
ご主人: 以前は東急田園都市線の梶ヶ谷駅からほど近いマンションに住んでいました。利便性の面では問題はありませんでしたが、二人の子供ために、もっと広くて環境のよい住まいを探していました。
奥さま: 梶ヶ谷とは一駅ちがうだけなのにずいぶんきれいなので、もともと宮崎台に憧れていたのもあったし、住みたい気持ちはありました。新百合丘のマンションの公募に落ちてしまったのと同じころに、ここの話を聞いて、家が建てられる前に見にきたりしてたんですよ。近いことをいいことにしょっちゅう見に来ましたね。
木立の中の暮らし
○以前の住宅に比べて、どんな点に満足されていますか?
ご主人: やはり緑の多さでしょうか。初めて桜坂を訪れた時は、まだ何も建っていなかったので、鬱蒼とした雑木林がそのまま残っていました。都心からすぐの住宅地の中にあるとは思えないほどの規模で、大変驚きましたね。
現在残っている宮崎台の高木類は、住宅が建てられる前からあった木をそのまま保存したものですので、普通の建売住宅に比べ、樹木の大きさが大変立派です。しかも、各戸を区画分けする際にも気を配っていますので、既存の樹木を保存しつつ、住民同士のプライバシーにも配慮した設計がされています。そういった点に大変満足していますね。
○緑が多くて、窓からの眺めが都心から程近い住宅地の中からのものとは思えませんね。
奥さま: 実はダイニングの横はもともとは土面だったんです。芝生にしたかったんですが、芝生を育てるには陽当たりが足りなかったので、リビング側からダイニングの横までデッキを繋げてしまいました。
ご主人: デッキに出てバーベキューとかしています。
奥さま: 夏、デッキに出るときには蚊よけスプレーをしないとあっという間に数ケ所刺されますね。蚊は11月くらいまで出ます。
蚊の他には、小っちゃなクモやヤモリなんかも見かけます。ヤモリは守神だと聞いたので大切にしていますよ。トカゲもいるし、春になるとクロアゲハが必ず飛んでくるんですよ。主のようにふらふら飛んできて、あ、春だな…と思うんです。毎年来るんですよ。
ご主人: 木がとても高いので、場所によっては陽当たりが足りないようです。お花を育てるのが好きなご近所さんも、やっぱり陽当たりの問題で、育てるのが難しいと言ってました。
立派な木が多いから、日陰になる部分があるのも仕方ないでしょうね。
奥さま: 桜の時季はとても綺麗ですしね。ただ毛虫が落ちるからそれなりに手入れは必要です。引っ越してきて最初のころは、桜の木の下のレンガが真っ茶色になっていた理由も分からなかったら。結局毛虫の糞だったんですけど。
ご主人: 桜は毛虫がつくので消毒しないといけないんですが、樹木の手入れをしてくれている地主さんによると、桜も他の木もあんまり神経質に消毒しないほうがいいとのことです。消毒をしすぎると、木が無菌状態になって弱くなるからよけい壊れるし、免疫を持たせるために少し離しながら手入れをする、適度な消毒がいい、というのが地主さんの意見ですね。
季節感を楽しむしつらえ
○特に暖かいとか寒いとかいう不満はありますか?
奥さま: みんなに「寒いでしょ」と聞かれるんですけど、そんなことはないですね。気密性がいいので暖かいです。
○以前、桜坂のビデオで敷地内を調査されている映像を見たことがあるのですが、温熱環境の調査だったのでしょうか?
ご主人: 調査(注1)は緑地を活かしながら計画されたこの住宅地が、実際のところどんな環境を生み出したのかを調べるためのものでした。住み始めてすぐの年から始まって、年間を通じて風がどっちから吹いてくるとか、宅地内のどんなところが暑いとかいった、敷地内の微気候を調べるために、家の中も外もセンサーだらけでした。調査は3年続けられました。
その他にも各住戸の各部屋の電気消費量のデータも取っていましたね。
奥さま: 大学の研究室も調査に関わっていたので、よく来る大学生と子供が仲良しになって遊んでもらっていました。寒い日も暑い日もいらしてましたよ。
ご主人: いろいろやってみてハッキリしたのは、一つの要素だけを変えてもそんなに大きな効果は得られないということですね。この家は他にも断熱材を増やしたり、日射を遮るための可動スクリーンなども取り入れましたが、全体的に改善しても、ほんの少しの違いしかわかりません。
桜坂の私の家を含む全ての住戸は、少し前(※平成10年2月竣工)に建てられたので、今の高気密高断熱住宅に比べれば、いろいろと足りないこともあります。いわゆる環境共生的な設備、例えば「太陽光を機械設備によって利用する」とか「雨水活用」などの取り組みも採用していません。
しかし、地主さんが戦後の焼け野原に1本1本植樹したことで育まれた緑があります。そういった外の環境を活かした家づくりをしたからこそ、窓を開けて夏を過ごしたりできるわけです。
○共有部分(外部)はどういった実験を行ったんでしょうか。
ご主人: 打ち水の効果を調べたりしていました。いま東京都で実験しているのと近いことをやっていました。
打ち水はただ水を撒けばいいというわけでもなくて、朝や夕方の日の昇りきらないうちに行ったほうが効果的です。
朝と夕方に打ち水をしてきた伝統的な暮らしの知恵にはそれぞれに意味があるということが、この打ち水の実験でも実証されたと思います。 それにここは夏季に南から北へ吹く風が宅地内を抜けていくように設計されているし、樹木による木陰も多いので、打ち水の効果はさらに高いのではないでしょうか。
○凄いですね。夏はほとんどクーラーがいらないのでは?
奥さま: 風のある日は窓を開けると気持ちがいいんですが、床にほこりが入ってざらざらになってしまうので、窓を閉めてクーラーをつけて過ごすこともあります。気持がいいけど汚くなる、どっちを取るかなんですが、まったく付けないで暮らすというのはなかなか難しいです。
○一番過ごしやすい季節、あるいは好きな季節というのはいつでしょう。
奥さま: どうかな…いやだと思う季節はないのですが、やはり春と秋かな。緑があって青い季節のほうが、なんとなく嬉しいですね。
ご主人: 春は桜坂の桜が室内から見えるので、大変好きな季節です。夜でも街灯の灯りに照らされて、夜桜を楽しめるんですよ。