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kkj 特集~環境共生住宅と水害

多発する水害

水害は、「土砂災害」「洪水(氾濫)」「浸水」に分類され、私たちの生活に欠かせない水をもたらす「降雨」によって引き起こされる災害です。
日本は昔から台風や集中豪雨などによる水害が多く、人々の暮らしを水害から守るための「治水」が行われてきました。
明治時代以前は各地を治めていた武将や大名により、地域ごとの治水が行われていました。
明治以降は、西欧を中心とした近代の技術を取り入れ、より頑丈な堤防を作ったり、ダムなどで川の水量を調整したりすることができるようになってきました。
日本各地の主要な河川で次々と治水事業が進められた結果、昔より洪水の起こる頻度は少なくなってきました。

武田信玄が釜無川につくった「信玄堤」 堤防の近くにある木の枠は「聖牛」と呼ばれるもので、川の流れを抑えて、洪水流から堤防を保護するために設けられています。
「霞堤」と組み合わせて、洪水が起こっても被害が大きくならないよう工夫されていました。

しかし近年のかつてない規模・記録的な雨量により、都市部でも水害による大きな被害が発生しています。
多発・甚大化している水害の背景には、地球規模での気候変動の影響があると言われています。
水害リスクの発生を抑えながら、発生時の水害に備えた「レジリエンス(resilience/しなやかさ・回復する力)な住まい・まち」にしていくために、住まい手として、家のまわりでどんな治水を行っていけばいいのか、一緒にその方法を探していきましょう。

出典:国土交通省「河川事業概要2023」
災害をもたらした気象事例
出典:気象庁HP「災害をもたらした気象事例(平成元年~本年)」

近年多発する水害の要因

外水氾濫/川の水が堤防からあふれたり、堤防が決壊したりすることにより、大量の水が堤防の内側(住宅地や田畑)に流れ込む水害

水害は、大きく「外水氾濫」と「内水氾濫」に分けられます。
外水氾濫は、川の水が外にあふれることによって生じます。川の水が堤防からあふれたり、堤防が決壊したりすることにより住宅地や田畑に大量の水が流れ込む水害です。

内水氾濫/市街地に降った雨が雨水の処理能力を超えることで発生する水害。
(雨が地面に達しにくいエリアで発生しやすい)

内水氾濫は、堤防で囲まれた地域内などでゲリラ豪雨などによる大量の雨水を排水できずに水が溜まって生じます。

さらに地下空間の利用が進んでいる大都市の駅前周辺などでは、地下施設への浸水被害が生じるなど、水害リスクが高まっています。
「都市型水害」は、雨水がアスファルト舗装や密集したビル群により地中へ浸透させる能力が低下し、下水道や中小河川に流れ込んで排水処理能力が追い付かず、あふれた水により道路や平坦地の冠水、地下街、地下鉄などの地下構造物に浸水被害が発生することを言います。

これら水害の要因として、下記の3つが考えられます。

1. 河床が周辺の平面地より高い「天井川」が多い
2. 流域の市街化により、自然湧水地が減少した
3. 気候変動により、平均雨量が増加した

それぞれの要因について、詳しく見ていきましょう。

要因1.天井川が多い

ロンドン、東京の河川高さの比較(出典:「水害の世紀‐日本列島で何が起こっているのか」森野美徳監修)

日本は国土の27.3%しか可住地がなく、低い土地に多くの人が集まって暮らしてきました。
そのため河川の水位より低い位置にある都市が多く、さらには諸外国に比べて急こう配な河川が多いことも相まって、河川から水が溢れたり堤防が決壊したりすると大きな被害が生じることになります。

要因2.流域の市街化により、雨水の地下浸透量が減少

1970年代の高度経済成長期後半から、河川沿いの低平地に住宅や商業施設、工場などの建設が進められてきました。洪水リスクの高い土地の開発は、元にあった水田の減少にもつながっており、雨水が地中へ浸透する機能の低下とともに、短時間に大量の表流水が河川に流れ込む要因にもなりました。

出典:国土交通省「河川事業概要2023」

要因3.気候変動による平均雨量の増加

下記の表は、国土交通省「河川事業概要2023」に掲載されているグラフです。1時間の降水量が50mmを超える「短時間強雨」の1年間の発生件数を、アメダス1300地点あたりに換算した値の推移を示したものです。
1976年から2022年までの発生件数を比較すると、約1.5倍にまで増加していることが分かります。
地球温暖化に伴う気候変動の影響により、今後さらに短時間強雨の発生頻度や降水量が増大することが予測されています。

時間雨量50㎜を超える短時間強雨の発生件数が増加(約40年前の1.5倍)
出典:国土交通省「河川事業概要2023」

このように多発する水害に対し、自分や家族の命や生活を守るためにどんな工夫ができるのでしょう?
次章では、水害のリスクの少ない土地を選ぶための情報活用方法についてご紹介します。
水害のリスクと土地選び

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