ESHパッシブデザインツール
スタートアップガイド 例1.庇の効果
庇あり、庇なしのサンプルモデルを使って、庇の影響を検討してみましょう。ここでは、2階のベランダの出が1階のLD、手すりのパネル部分が日射を遮蔽するタイプと仮定して、2階の子供部屋に影響することを想定し、LDと子供室に着目します。
比較する形状モデル
出典:建築環境・省エネルギー機構『温暖地版 自立循環型住宅への設計ガイドライン』を元に加工
設定項目
庇あり・なしのシミュレーションを以下の設定で行います。赤丸はデフォルトに対して変更した箇所です。
LDにスケジュールを割り当て、暖冷房期間を設定しています。
設定したLDのスケジュール
操作マニュアルP46
計算結果
まず、LDの年間暖冷房負荷量を確認し、続いて、LDと子供室の室温変動を確認します。
暖冷房負荷量(LD)
年間暖冷房負荷量を確認すると、
・庇があると、冷房負荷量は21.4%減少する
・庇があると、暖房負荷量は5.4%増加する
・庇があると、年間暖冷房負荷量は7.2%減少する
月別の暖冷房負荷量を確認すると、
・冷房負荷量の差は、特に8月に大きい
・暖房負荷量の差は、1月と3月に大きい
・5月、庇なしでは冷房負荷が大きく、庇ありでは暖房負荷が大きい
※5月と10月は、室内温度によって暖房もしくは冷房が入るように設定しており、暖冷房負荷量が両方発生しています
以上の計算結果から、日射取得と日射遮蔽の影響を確認しました。ここでは、負荷量に着目して検討しています。負荷量の総量の他、月毎の値を確認するなど、季節変動とあわせて確認しましょう。
5月や10月といった中間期も確認のポイントです。夏と冬で変動の具合は異なりますので、寒い日や暑い日といった室温の変動も確認するようにしましょう。
暑い日の室温変動(LDと子供室)
・両モデルともに、いずれの日の日中も30℃を上回る
・両モデルともに、夜間、快適な範囲に近づくもの、全体的に室温が高い。
ただし、室温が高い要因は、窓を閉めた状態で計算していることとも関係する
・日射の多い7/4の日中の庇ありにおいて、子供室の自然室温は、外気温程度(+0.8℃)である
自然室温時の「室温が設計目標(30℃) を上回る時間/年間」をみると、
・LD、子供室ともに、ベランダの出と手すりによる遮蔽の効果が確認できる
寒い日の室温変動(LDと子供室)
日射がある2/1の日中をみると、
・庇なしのLDKの自然室温は、快適な範囲を超え、オーバーヒートする
・庇ありのLDKの自然室温は、庇なしの場合より抑えられる
・両モデルともに、日中、暖房設定温度(20℃)を超えているため、暖房は稼働していない
・庇なしの子供室の自然室温は、設計目標を超え、快適な範囲に到達している
・庇ありの子供室の自然室温は、設計目標を超えるが、快適な範囲には到達していない
・2/1の15時の両モデルにおいて 、子供室の自然室温差は、4.6℃である
自然室温時の「室温が設計目標(13℃) を下回る時間/年間」をみると、
・子供室のベランダの手すりによる遮蔽の影響が大きい
結果
●ベランダの出のLDへの影響
・夏に、LDの室温が数度抑えられる。
・暖房負荷量となって表れているものの、室温の差は大きくない。
●ベランダの手すりの子供室への影響
・夏は遮蔽として働き、温度の上昇が抑制され、冬は日射が遮ぎられ室温が上昇が低くなる。
年間暖冷房負荷量や、室温の変動から、LDKと子供室におけるベランダの影響を確認しました。
しかし、夏は全体的に室温が高いことから、外気の導入など、他の手法を検討する必要があります。